【おさんぽ】月の夜に
月の綺麗な夜に僕は時々散歩にでる
野生の血がほんの少し騒ぐのか猫のチビは僕についてくる
空けたドアの隙間からするりと抜けて
行く先も道も大抵は決めずに僕は歩く
チビはブロック塀の上を歩いてくる
沈丁花の花を超えて
時には椿の枝葉を超えて
見下ろしているのは満天の星と月だけ
そうしているうち いつもの頃になると
チビはひょいと飛び降りて足元にすりより一声鳴く
もうそろそろ帰ろうよ…と
抱きかかえてやると 手の中からもう一度塀の上に飛び乗る
塀の上で振り返り チビはもう一度だけ鳴く
こうして僕は月夜の帰り道をまた歩く
チビのあとについて歩いていく