あをぎりの小さなおはなし

つれづれなるままにその日暮らし…

半雑記・半おはなし(´・ω・`)な今日の雑記

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 おさぼりごめんなさい(´・ω・`)なあをぎりです。

 大雨のあとは連日の猛暑。猛暑のさなかには不幸な事故も起きてしまいました。皆様も体調管理や水分補給など十分にお気をつけくださいませ。

 

雑記系なのでお忙しい方は、例によってナナメかすっとばでどーぞー♪

あるいていく道

【1日目】

「それでもう道路は全部通れるようにはなったの?」
軽トラの助手席から、運転手の叔父にむかって正一は言った。
「あー、土砂崩れなんかの主要幹線道路は、自衛隊が来てまだ作業してるけど、家は周り道をすれば大丈夫」
タバコをくわえ、前を向いたままの叔父は言った。
多数の被災者や死者までだした、梅雨の終わりの大雨。
それが一段落しそうな頃にかかってきた一本の電話が全ての始まりだった。
不幸中の幸いでは叔父宅では、裏山の近くに建てていた納屋が土砂に半分うずもれてしまっただけで、自分はその復旧の手伝いという事になっている。
だが、近隣では各所で住宅浸水や土砂崩れの被害に会い、非難勧告で市の公民館に非難してなければかなりヤバい家もあったそうだ。
「今おばちゃんたちは?」
「電気も水道も全部無事だったから家に帰ってるよ。もっとも学校が早めに夏休みになったから玲一と響香がうるさくてかなわん」
言われて甥っ子と姪っ子を思い出した。
叔父宅に行くのはもう五,六年ぶりだから、中学生になってるであろう響香ちゃんなどはずいぶんと大きくなってるだろう。
正一も胸のポケットからタバコを取り出すと、ライターで火をつけて紫煙を吐き出した。

正一は30台半ば、良く言えば独身貴族。普通に言えばフリーターをしている身分だ。
以前はコンピューターシステムのプロジェクトを担っていたのだが、勤めていた会社が昨今の不況によりあっという間に業績が悪化した。
社長へ社員への説明を行うべきという直談判もむなしく、給与の支払いが数ヶ月に渡って連絡もなく遅れ、社内では沈没する船から逃げ出す様に辞職を申し出る者が会い継いだ。
提携会社との新技術システム構築を打ち出し、構築途中でも出来高で入金を工面してもらう企画書類を作ったが、体面に拘った社長がその提案を蹴り、東京へ新事務所を作って営業を行うという半ば暴挙な決断をした時に、正一も会社を辞める決断をした。
正一が辞める事を知って何人かはついてくると言ったのだが、丁寧に断った。
「もらえる物はもらっときなさい」と。
それは、失業保険の事だった。
会社事由による退職金はすぐに支給される。その間に新しい仕事を見つけるには十分な若者達ばかりだった。
しかし、そんな事や健康保険の制度などは知らないのでその辺は言い含め。いろいろとアドバイスをした。

会社近くにあったファミレスでアドバイスやらそんな話をしていたとき、彼らは正一がどうするかを聞いてきた。
「んー。AR系でもいじってスマホアプリでも作ってみようかなと?一年の時間こっきりでね。それでどうにもならんかったら適当に生きるさ」
ちょっと前に心の中で暖めていた構想を話すと、若者は参加したいと身を乗り出してきた。
「正直。もう30過ぎたおっちゃんがコード(プログラム)書いてる時代じゃないと思うんだよね。だから半分遊びなんだけど…」
正一のモットーは『楽してお仕事』でなくて『楽しくお仕事』と、普段言っていたのが災いしたのかもしれない。
結局の所、その時、3人がこの期限付きプロジェクトに参加する事になった。
失業保険については、合法のちゃんとした裏技を使う面倒が増えたのだが、それは仕方のない事だとあきらめた。
正一は、一人で気軽にするつもりだったのに…

そして出来上がったアプリはなぜかヒットしてしまった。
そうなると、この業界ではよくある事なのだが、某大手ソフト会社が版権の買取を言ってきた。
ポケモンなんかもあれは任天堂が作ったのではない。下請けのゲームフリークという会社が元は作ったものだ。
スマホアプリの業界では、特に顕著でヒット作が出ると大手ゲームメーカーが買い取って自社ネームで改造して販売をしてしまう。
正一はついてきた3人に事情を話してメーカー側に3人雇用を確証させ、あっさり版権を売り渡した。
もちろん版権料金については山分けしたあとだ。

以来晴耕雨読を決め込んで、一線からは退きフリーターなんかもやってる。
当然の事ながらそれなりのポジションでの誘いもあったが、宮仕えはコリゴリなのと折りしも大病が見つかり、治療するからと理由をつけ断っていた。
おかげで一部の親類からは、半ば鼻つまみモノではあったのだが、昔からあまり贅沢をする気のない正一にとっては悠々自適な生活を送っていたのだった。

そういった経緯もあり、何かあると都合よく狩り出されることはよくある。
この復旧のお手伝いもその一環だった。

夕方の田舎道をガタゴト軽トラにゆられ、そんな事を考えてているとほどなく叔父の家へ到着した。
もう日が沈む頃ということもあり、作業は明日からということになって、甥・姪の大きくなりように感動しながらも、晩御飯をご馳走になり、クーラーの効いた客間で一日目は終わった。


【2日目】

朝からセミがうるさかった。
あれだけ連日降った雨が、今度の予報では十日近くも晴れるそうだ。まったくもってふざけている。
朝食を済ませると、小学生の玲一と中学生の響香は、学級集団での地域ボランティアとの事で復旧作業にでかけていった。
正一はさっそく納屋の修理でもするのかと思っていたのだが、再び軽トラに乗せられ車で5分程度の距離にある浸水した民家へ向かうことになった。

その家には70歳になるおばあちゃんが一人で住んでいたそうで、勧告が出た時に貴重品と位牌だけ非難したそうだ。
手伝いに来た叔父と自分を手厚く迎えてくれた。
昔ながらの大きな一軒屋だったが、家屋の下から80cmくらいの所までは泥水の跡が残り、所々窓ガラスも割れていた。
中を覗くと畳は浮いてバラバラになり泥をかぶっていたし、ガラスの割れ目から入った木切れやゴミが散乱している。
家具も倒れたものから壁に突き刺さっているものまで。
改めて自然の恐ろしさを目の当たりにした。

が、どう手をつけたものか迷っていた正一だが、叔父が声をかけてきた。
「こりゃ建具を全部外して、中も洗わないとダメだな。正一、おまえ建具外してけ」
言われた通り、ガラス戸やサッシをはずしていく。
「割れたガラスに気を付けろよ。割れたのがあったら外してこっちにもってこい」
「はいはい。わかりましたよ」
いつのまにか他にも何台か車が来て、数人の方が手伝いをしていた。
建具を外し終わると外へ並べ水で洗う。幸いな事に、ここでも生活インフラはかろうじて生きていた。
次に、家の中の畳を取り出すのだが、まず家具を外へ出したのだが、まだ泥水をたっぷり吸った畳はひたすら思い。
へっぴり腰で畳を引きずりだしていた正一に、他の方がすかさず手伝う。
外のブルーシートの上に松の木に立て掛ける形で置き、一枚づつタワシで洗ってからは次の畳を運び出すという作業を何度もした。
目の前に見える森では相変わらずセミが五月蝿い。いつ終わるともわからない作業に正一は汗だくになっていた。

結局の所、まる一日を費やしてなんとか家を洗うことは出来た。
が、畳などはもうしばらく乾かさないといけないので屋外に放置し、壊れたサッシなどは業者も今はこれない事から、おばあちゃんは公民館へ帰っていった。
普段あまり肉体労働などはしない正一はヘトヘトだったが
「どうもありがとうございます。本当にありがとうございます」
との言葉に、少し報われた気分嬉しくもあり複雑な思いも抱いたものだった。
家の奥にあった仏壇は信じられないほど無傷で、正一はおばあちゃんが公民館へ帰るときに仏壇で手を併せていた言葉が忘れられなかった。

「仏様。おとうさん。守ってくれてありがとう。ありがとう」


【3日目】

今日も朝からセミの声で朝早くに目が覚めた。
体のアチコチがガタガタ言ってる気がするが、半ば仕方ない。
今日も軽トラでどこかへでかけるのかと思いきや、外に出ると重機に乗った叔父がいた。
玲一と響香は今日も学級ボランティアへもう出かけている。
「おう。今日はウチの納屋片付けるぞ」
「よその手伝いとかはもういいの?」
「ああ。この辺は被害が少なかったから昨日で大体は片付いたな。あとは、修理業者待ちの所と、アパートとかで逃げ出して、住居者不在の家くらいだ」
そう言うと叔父は母屋から10mくらい離れた納屋の土砂をユンボで取り除きにかかった。
このさなか、一体ドコから持ってきたのか、建築会社のデカデカと書かれたユンボの事はあまり考えないことにした。
横幅5mに奥行き10もある納屋には1/3くらい山から落ちてきた土砂と木々が積もり、一部を押しつぶしていた。
「俺が土砂を向こうにやるから、安全な所でそれを向こうへやってくれ」
見ると母屋には三叉になった鍬がたてかけてあった。

親父が避けた土砂を林のほうにある広場へ土砂を鍬で掻き出す。たちまち汗が吹き出てきた。
重機の音とセミの鳴き声。照りつける日差しに今日も一日暑くなりそうだった。


「おつかれさん。ご苦労だったな」
時刻は夜の7時、叔父は正一のグラスにビールを注ぎつつそう言った。
結構かかると思っていた納屋の復旧だったが、なるほど外壁の木板はヒビわれていたものの、中の農機具などにはほとんど被害はなかった。
正一はお役ご免を言い渡されたのである。
「まだ、直すところとかあるんじゃない?」
正一は言った。
「まぁ、後は修理関係の待ちが殆どだ。常盤のばっちゃんトコも畳がかわいて業者が来るのにはもう少しかかるだろうし。なんにせよおつかれさんだ」
そう言って半分空いたグラスに叔父はまたビールを注いだ。
テーブルの上には、スーパーに商品も並び出したということで、おばさんの心づくしの手料理が並んでいる。
最後の夜ということもあり、玲一と響香もなんとなくはしゃいでいた。
「しかし、俺や死んだ親父が生きてた頃も、ちょっとした洪水はあったが、こんな事はなかったんだがなぁ」
かなり酔いの回ってきた叔父がポツリとこぼす。
「異常気象だししょうがないんじゃない?」
響香が言う。女の子というものは、やはり成長が早いのかもしれない。単に大人びたいだけのお年頃なのかもしれないが。
「でもな響香。ニュースでは異常気象だ異常気象だと騒いでいるが…」
ゲリラ豪雨や杉花粉なんかもそうだが、今と昔は違う。情報の伝わり方がって話もあるんだろうが、これが日本や世界にとってのあたりまえの気象になって行くんじゃないかと思うとゾッとしないでもないんだがなぁ」
言われてみれば正一もハッとなる事はある。
テレビは何かあればすぐに、異常気象を声高に叫び、毎年毎年『今年一番の暑さ』や、『この冬一番の寒さ』は一体何度発生するのだろうと思うには事欠かない。
誰も得をせず、被害が起こる様な災害は事は減って行って欲しいものだと思うが、玲一や響香よりもう少し大人な正一にはあまり楽観する事は出来なかった。


その夜。最後の夜を客間で寝ていた正一は、少し不思議な夢を見た。
真っ赤な空に真っ黒な地面。そこには1本の白い道が通り、自分の立っているすぐ脇には葉が一枚もない木だけがぽつんと立っていた。
「おや。人間がいる」
その声はふいに頭の上から降ってきた。
よく見ると上の枝の根元に一匹の黒い猫が金色の目でこっちを見ている。
「おまえは誰だ?」
正一は訊いていた。
「誰だって?そんな事もわかんないんだね。僕はキミだよ。もう一人のね」
「しゃべる猫なんて聞いた事もないぞ!」
叫んだ正一に黒猫はクスクス笑いで応えた。
「クスクス。何も分かっちゃいないんだね。起きた事は、そう。キミたちのやってる事が起きただけだよ」
「違うのかい?キミたちは食べる為に、牛や豚を飼い殺して食べていない?住む為にそれ迄の住人だった森の動物を追い出して、木を切り倒し住む家を建てている。キミたちは追い出した鳥や動物をどうした?住む場所を与えてあげたりしたのかい?」
「それとこれと何か関係があるのか!」
「まだわかっちゃいないね。キミたちは何か勘違いしているんだよ。簡単な事さ。何千種類という動物がこの世界から消えたのを知らないのかい?沢山のお乳を出す牛を造らなかったかい?病気や薬品に強い植物を造らなかったかい?あまつさえ命をいじってさ。ある意味、愚かで優秀すぎたのさ。そのせいで歪んで地球(ほし)が悼んできている。ま、それもボクにとってはどうでもいい事だけどね」
「何の事を…」
「いいかい?少しだけ教えてあげよう。キミたちは何回この星で全ての生き物が絶滅しかけたと思ってる?」
「?」
「有名なのは隕石で恐竜がどっかんだろうけど。キミたちがその今の知識で知っていると『思ってる』だけでも五回は全生命は絶滅しかけてるんだよ。短い時で五千万年おきくらいかな」
「さてはて。キミたちの歴史はどうかな。ン千年の歴史。一万年でもいいよ。仮に一万円と考えてみようか…」
黒猫はまだクスクスと笑っていた。
「恐竜は、この星で二億年以上生きていた。一万円と二億円。短いときは五千万円の差。そんな間隔で星は変わり生命は大量死滅している。それがね。たった数千年で痛み、ゆがみ、変動してるんだ。おもしろいと思わないかい?」
そこまで言うと黒猫はゆっくりと目を閉じた。
「ま、僕が教えてあげるのはここまでだよ。あとは自分で歩いていくんだね。この道は一本道であって一本道じゃない。本当ならここは人間の来る所じゃないし、でも、もし歩いていきたいんだったら好きにすればいいよ」
正一は何かを言おうとしたのだが、何も言葉は出てこなかった。
黒猫に何度か声を掛けてみたのだが、猫は眠り込んでしまったようで正一の問いかけには何も応えてくれることはなかった。
「何が…」
この白い道の先にあるのだろう。歩いて行くとどうなるのだろう。
しばらく考えたあと、意を決して一歩を踏み出したとき、セミの鳴き声が聴こえた。


【4日目】

目を覚ましてみると、そこは寝ていた客間だった。
早朝からのセミの鳴き声で今日も暑くなることが予想された。
朝の挨拶を兼ねて台所に行くと、ちょうど玲一が帰ってきた所だった。
今日から学級ボランティアもないので近所の無事だった神社へ朝のラジオ体操がはじまったそうだ。
最近は半自由参加になったという事で、今日は7人しか集まらなかったとブーたれていた。
朝餉を頂き、来る時と同様に叔父に駅まで軽トラで送ってもらった。
もう数日残って玲一たちとも遊んでやりたかったが、事情が事情なので、また来る事を約束し電車に乗り込んだ。

電車の中から外の風景を眺め、正一は一人で昨日の奇妙な夢と叔父の言葉を思い出していた。
『これが日本や世界にとってのあたりまえの気象になって行くんじゃないかと思うと…』
そう変わらずそうなるのかもしれないな…。ふとそんな考えが頭の中をよぎった。
「これ(変化)は、年寄りの繰言…」
筋肉痛の残る腕や肩を揉み、そう若くない事を二つの意味で感しながら、正一は片方の考えを振り払う様に、電車の中で一人ごちた。

 <了>

 

 ちょっといろいろありまして、おさぼってた上に、半フィクションでこしょこしょ書きたくなったら、以外と時間がかかってしまいました。定期モノ系もさぼりまくってる…

 ですが暑いどすえー。PCの前座りたくないどすえー。でもまぁ、無理せずちょこちょこがんばるです(´・ω・`)な今日この頃でした。まる。 


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