あをぎりの小さなおはなし

つれづれなるままにその日暮らし…

【えほんにならず】みつばちのおはなし

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 あなたが本をよんでいる ここからすぐ近くの 小さな森のそば。
 一本の木のほら穴のなかに みつばちの巣がありました。
 巣のすぐ近くには お花畑があって、今日もみつばちが、はちみつをあつめにとんでいきます。
 たんぽぽや れんげや すみれや なのはな。
 たくさんのお花のなかの 大きなたんぽぽのうえに 2匹のみつばちがいました。
 「ミリー。みつあつめはおわった?そろそろもどりましょう」
 「ポリー。もうちょっと。もう少しなの。まってよ」
 ミリーとよばれたみつばちは からだじゅうに たんぽぽのかふんをいっぱいつけたまま まだみつをあつめています。
 「そんなにたくさんあつめたら、またふらふらとんじゃうわよ」
 ポリーはわらいながらいいました。
 ミリーは ほかのみつばちよりも ちょっぴり小さいみつばちでした。
 たくさんみつをあつめたときは おもくてよろけてしまうことがあります。
 そんなミリーをみて まわりのみつばちがからかったりすると いつもポリーがかばってくれました。
 「ミリーはちいさいけれど みんなにまけないくらい いっしょうけんめいしているのよ」
 「それに だれよりもはやくとべるんだから」
 はちみつやかふんのあつめかたも お花がたくさんさいているばしょも みんなポリーがおしえてくれました。
 ミリーはポリーのことが大好きでした。

 たくさんみつをあつめたミリーとポリーは 巣にもどることにしました。
 やっぱりミリーは みつをあつめすぎてしまったので すこしよろよろとんでいます。
 「ミリー そっちにいっちゃだめよ。森のおくにはこわいスズメバチの巣があるんだから」
 森のおくには とてもこわいスズメバチの巣があります。
 スズメバチはときどきやってきて みつばちをつかまえてたべてしまうのです。
 「いっしょにかえりましょう」
 ポリーはミリーのてをにぎって いっしょにとびました。
 ポリーも かわいい妹のミリーが 大好きだったからです。

 つぎの日のあさ ミリーがおきてみると そとにはあめがふっていました。
 あめの日は はねがぬれてしまうので みつをあつめにいけません。
 「おはよう ミリー」
 ポリーもおきてきて ミリーにあいさつをました。
 「おはよう ポリー。きょうはなにをするの?」
 「きょうは そとにはいけないから ようちゅうさんたちのおせわをしましょう」
 ポリーについていくと 巣のたくさんのあなのなかには ようちゅうたちが おなかをすかせてまっていました。
 (おはよー おはよー)
 (ねぇおなかすいたよ)
 (きょうのごはんはなーに)
 ようちゅうたちは ミリーにはなしかけます。
 「みんなわたしたちの妹よ」
 ポリーはいいました。
 ミリーのおかあさんも ポリーのおかあさんも 女王さまだとポリーがおしえてくれました。
 女王さまは たくさんたまごを生んで それがようちゅうになって みつばちになるのです。
 「この子たちは わたしたちのあつめた はちみつとかふんをたべて おおきくなるのよ」
 ポリーは ようちゅうに みつをたべさせながらいいました。
 「はやく大きくなってね」
 ミリーもそういって べつのようちゅうに みつをあげました。
 ポリーはほかにも いろいろなことを おしえてくれます。
 あっちの子は たんぽぽのみつが好き
 こっちの子は れんげのかふんが好き
 (おいしいよ。おいしいよ。)
 (ありがとう おねえちゃん)
 (おいしいよ)
 ようちゅうたちは とてもよろこんでいるようでした。
 たくさんの妹たちに あさごはんをあげおわると ポリーはいいました。
 「さあ わたしたちもごはんをたべましょう」
 「はーい」
 ミリーはそういうと、ミリーの大好きなスミレのはちみつをとりに、いったのでした。

 あさごはんをたべても あめはまだふっていました。
 「あーあ つまんないな」
 ミリーは どうしても外のけしきがみたくて ひみつの抜け穴にいくことにしました。
 おおきな巣のなかで ミリーがまいごになってしまったときに ぐうぜんみつけたひみつの穴です。
 巣のいちばんしたの すみっこのおく。
 その穴は ほかのみつばちでは とおることはできませんでしたが ミリーだったらとおりぬけられます。
 でいりぐちのほかに 外に出ることができる ミリーだけの ひみつの抜け穴でした。
 「ふう」
 抜け穴をでると 外のけしきがみえました。
 たくさんの木や とおくにはれんげのお花畑もみえます。
 あめの日は 外にはいけないけれど ミリーはきらいではありませんでした。
 花やはっぱに あめのつぶがたくさんつくと きらきらひかって 宝石のようにみえるからです。
 あめがやんだあとのお花畑は まるでほうせきばこのようで あかやあおやきいろ いろんなお花のみつをあつめたくなってしまいます。
 「はやく やまないかなー」
 ミリーがそんなことをかんがえていると 木にとまっていた いっぴきのカナブンがミリーにはなしかけてきました。
 「おや こんなとこにみつばちがいる。あまやどりかい?」
 「こんには カナブンさん。わたしは そとのけしきをながめていたの」
 ミリーはいいました。
 「そうか おいらはブンタっていうんだ」
 カナブンのブンタはいいました。
 「今日は 花のかふんをたべにきたんだけど あめがふってるから少しのあいだだけ あまやどりだ」
 「少しのあいだだけ?」
 ミリーはブンタにききました。
 「うん 少しだけ。もうすぐ このあめはあがるぜ」
 「ほんとうに?」
 「ああ ほんとうだとも。おいらが言うんだから まちがいない」
 まるでそれが まほうの言葉であるかのように あめはどんどんやんでいきました。
 しばらくすると あめはすっかりあがり くものあいだから 日がさしてきて森の木や とおくのお花畑がきらきらとかがやきだしました。
 「な。言ったとおりだろ?」
 ブンタはとくいげにいいます。
 「ありがとうブンタさん。わたし みつあつめにいってくる」
 「またな おじょうちゃん」
 ミリーは抜け穴にもぐりこむと いそいで巣にもどったのでした。

 「ポリーポリー!雨やんだよ」
 「ほんと?じゃあ きょうはユリのみつをあつめにいきましょ」
 ミリーとポリーは 巣からとびでました。
 あめあがりのお花畑は やっぱりきらきらとかがやいていて とてもきれいです。
 ミリーはうれしくなって お花畑のうえを すごいいきおいでとびまわりました。
 「ミリー こっちこっち」
 ようやくおいついたポリーがいいます。
 「もう。ユリのお花のばしょしらないのに さきに行っちゃだめでしょ」
 「えへへ。ごめんなさい」
 ミリーとポリーは きのうとおなじように てをにぎると いっしょにとんでいきました。
 レンゲのお花畑をこえて そのむこうの小川をこえると たくさんのユリの花がさいているばしょが ありました。
 「じゃあミリーはこっちからみつをあつめてね。 あたしはむこうのほうから あつめるから」
 「うん わかった」
 そう言うと ポリーはお花畑のはじっこの みえないくらいとおくのほうまで とんでいってしまいました。
 「いいにおい。」
 ミリーはいいました。
 ユリの花のにおいは、すこしあまくてとってもいいにおいがします。
 むねいっぱいに いいにおいをすいこんで ミリーはちかくにあった いちばんおおきなユリの花にもぐりこもうとしました。
 「きゃっ」
 ミリーは大きな声をあげて ユリの花からとびでました。
 ミリーが入ろうとした花のなかで なにかおおきなものが うごいていたからです。
 「ああ ごめんなさい」
 ユリの花から みたことのないみつばちが出てきていいました。
 それはそれは 大きなみつばちでした。
 「こんにちは おどろかせてごめんなさい」
 「わたしはマーサ。西の森からきたの。あなたはどこからきたの?」
 大きなみつばちは いいました。
 「こんにちは わたしはミリーよ。東の森からきたの」
 「あなた とってもおおきいのね」
 ミリーは マーサを見上げていいました。
 「あなたはちいさくて かわいらしいのね」
 マーサは マーサのはんぶんくらいしかない ミリーをみていいました。
 マーサとミリーは ユリの花のうえにならんですわり たくさんのお話をしました。
 マーサはからだがおっきくて いつもみんなにからかわれたおはなしをしてくれました。
 ミリーはからだがちいさくて いつもみんなにからかわれたおはなしをしました。
 「でもわたしは ちいさいけど とぶのはとっても はやいの」
 ミリーは いいました。
 「わたしは とぶのはおそいけど おおきいから たくさんみつをはこべるの」
 マーサも いいました。
 「わたしたちなかよしだね。おともだちになってよ」
 ミリーがいいました。 もちろんマーサも えがおでおともだちになってくれました。
 「そろそろ もどらなきゃ」
 それから しばらくして マーサがいいました。
 そういえば おしゃべりにむちゅうになってて じかんのたつのもわすれていたのです。
 「ありがとう ミリー。ちいさなわたしのおともだち」
 マーサは そういうと じぶんの巣へとかえっていきました。
 「さよなら マーサ。またあいましょうね」
 マーサにてをふってみおくってから ミリーはポリーのことをおもいだしました。

 「ポリーは どこにいったのかしら?」

 ポリーをさがしに ミリーがユリの花のうえをとんでいると とつぜん ひめいがきこえました。
 みると ポリーがスズメバチにつかまって さらわれていたのです。
 「ポリー!」
 ミリーはさけびました。このままではポリーが スズメバチにたべられてしまいます。
 「だれか!だれかポリーをたすけて!」
 ミリーはもういちど さけびました。
 そのとき なにかがすごいいきおいでとんできて スズメバチにたいあたりをしたのです。
 「ブンタさん!」
 それはあのカナブンのブンタでした。
 たいあたりをされたスズメバチは ポリーをはなして森のおくににげていきます。
 「ポリー!だいじょうぶ?」
 ミリーはあわてて ポリーにかけよりました。
 「だいじょうぶかい?」
 ブンタもやってきました。
 「ポリー ケガしてる」
 スズメバチにおそれたポリーは 手や足にケガをしてきをうしなっていました。
 「こりゃいけねぇなぁ」
 ブンタさんはそういうと ちかくにあったチューリップの花にポリーをはこんで ねかせてくれました。
 「ありがとう ブンタさん。ブンタさんは だいじょうぶなの?」
 「ああ おいらのこのかたいからだは スズメバチなんてへっちゃらさ」
 ブンタはへいきで そういいました。
 「それより さっきおめぇさんたちの巣のほうへ たくさんのスズメバチがとんでいったぜ」
 「ほんとに?」
 ミリーはおどろいて いいました。
 もしほんとうなら 巣のみんながポリーとおなじように スズメバチにおそわれてしまいます。
 「ここは おいらがついてるから おじょうちゃんは いそいで巣にもどりな」
 ブンタはいいました。
 「ポリーまっててね。すぐだれか呼んでくるから」
 ミリーはきをうしなったままの ポリーにそういうと 巣にむかってまっすぐとんでいきました。

 ミリーがじぶんの巣についたとき もう巣のまわりには たくさんのスズメバチがとんでいました。
 いりぐちのところでは なんびきかのみつばちが ひっしでスズメバチとたたかっています。
 これでは 巣のなかにはいれません。
 まわりにいるスズメバチにみつかったら ミリーもすぐにつかまってしまうからです。
 でも はやくしないと ポリーがしんでしまいます。
 どうしようかこまっていたミリーでしたが すぐにいいことを思いつきました。
 「そうだ!」
 ミリーはスズメバチにみつからないように そっと巣のうらがわにまわると ミリーのひみつの抜け穴から 巣のなかにもぐりこんだのでした。

 巣のなかにはいってみると 巣のなかはおおさわぎになっていました。
 たくさんのみつばちたちが つぎつぎにケガをしてはこばれてきています。
 「ポリーが外でケガをしたの。だれかたすけて!」
 ミリーはひっしにさけびましたが だれもきいてくれません。
 ミリーがさけびつづけていると ミリーをみつけた女王さまが声をかけてくれました。
 「ミリー 無事でよかった。よくもどってこれましたね。」
 「女王様。ポリーが外でスズメバチにおそわれたの。」
 ミリーは女王さまに ポリーのことをはなしました。
 「そうだったのですか」
 女王さまはいいました。
 「いま いりぐちでは、みんながんばってスズメバチをくいとめています」
 「でも、どれだけもつかわかりません。」
 「それじゃあ ポリーはたすけにいけないの?」
 ミリーはいいました。
 「西の森には わたしの妹のみつばちの巣があります。」
 「そこにおうえんを おねがいすればいいのですが スズメバチがいるので外にでられません」
 それをきいたミリーは とつぜんいいました。
 「あたしがいってきます!」
 「でもどうやって?」
 女王さまがきいたときには もうミリーははしりだしていました。
 「ミリー!」
 女王さまはさけびました。
 ミリーは いそいでひみつの抜け穴から外へでると スズメバチにみつからないように 西の森をめざしてとんでいきました。
 「ポリー!みんな!まっててね すぐにおうえんをよんでくるから!」
 ミリーはポリーのなまえをよびながら ひっしでとびました。
 こうしているうちにも ミリーの巣では たくさんのみつばちがケガをしているのです。
 こうしているうちに ポリーはしんでしまうかもしれないのです。
 「ポリー!ポリー!」
 ミリーは ちからいっぱい とびました。
 こんなにはやく とんだことはなかったから ミリーはとてもつかれていました。
 こんなにたくさん とんだことはなかったから ミリーの羽はずきずきといたくなっていました。
 それでもミリーはいたみをこらえて とんだのです。

 いくつものお花畑や 小川をこえて どれくらいとんだのかも もうミリーにはわかりません。
 ミリーが あまりのいたさにきをうしないそうになったころ ようやく西の森のみつばちの巣につきました。

 「おまえはだれだ?ここのみつばちではないな」
 巣のいりぐちにいた もんばんのみつばちがいいました。
 「わたしは 東の森のミリー。あたしの巣が大変なの!」
 ミリーはさけびました。すると巣のなかからいっぴきのみつばちがでてきたのです。 
 「まぁ ミリーどうしたの!」
 それは あのおおきなみつばちのマーサでした。
 「マーサ…」
 ミリーはいいました。 
 「スズメバチがたくさん来て。みんなおそわれてるの。ポリーもケガをしたの」
 「わかったわ。みんなですぐにたすけにいくから あんしんして」
 マーサはいいました。
 「よかった。」
 ミリーはそれだけいうと つかれきって きをうしなってしまいました。

 「ミリー。ミリー」
 だれかによばれたような気がして、ミリーは目をさましました。
 目をあけると そこにはしんぱいそうなかおをした ポリーがいます。
 「ポリー」
 ミリーはいいました。
 「ミリーよかった。」
 ポリーはミリーにだきついてなきだしました。
 よくみると まわりにもたくさんのみつばちが ミリーをしんぱいそうに見ています。
 そのなかには あのおおきなみつばちのマーサや カナブンのブンタさんもいました。
 「ポリー。よかった」
 ミリーもポリーがぶじだったので うれしくてないてしまいました。

 「ミリーありがとう。おかげでみんなたすかりました。」
 女王さまがいいました。
 ミリーがきをうしなったあと 西の森のみつばちたちが みんな東の森へとんできてくれたのです。
 あまりにもたくさんだったので それをみたスズメバチは みんなにげてしまいました。
 「よかったね。ミリー」
 大きなマーサがいいました。
 「よかったな。おじょうちゃん」
 カナブンのブンタさんがいいました。
 「ありがとうマーサ。ブンタさん」
 ミリーはうれしくて もういちどないてしまいました。
 (ありがとう)
 (ありがとう。ミリー)
 まわりのみんなも いつまでもいつまでも そういってくれました。

 よくはれた はるのお花畑で きょうもみつばちたちは げんきにみつをあつめています。
 すっかりよくなったミリーも げんきにとんでいきました。
 もちろんポリーもいっしょです。
 たくさんたくさん みつをあつめて ふらふらになっても もうだれも ミリーのことをからかうものはいません。
 「いっぱいあつめたね。そろそろかえろうか?」
 ポリーがいいました。
 「うん」
 ミリーはポリーのてをにぎって なかよく巣へとかえっていきました。

 もし あなたがお花をながめたときに 小さなみつばちが いっしょうけんめいみつをあつめていたら…。
 それは あのミリーなのかもしれません。

(おしまい)

----------あとがき----------

某養蜂場で絵本コンクールやってて、以前応募したやつです。

当時付けたタイトルは忘れてしまいました(*´Д`*)w

毎年コンクール案内はくるのですが今年は方式かわったらしく、書こうかいな(´・ω・`)と気づいた時には応募期間がおわってました。今日の所は、これで許してやってください。

それでは、読んでくれた全ての方へ感謝を込めて(-人ー)


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