あをぎりの小さなおはなし

つれづれなるままにその日暮らし…

【わんこばなし】鈴の音(すずのね)

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チリンチリン…

僕はハッとなって立ち止まると振り返った

どうしたの?

夕暮れ時の駅からの帰り道、一緒にいた彼女は僕に聞く

視線の先には通りかかった一匹の猫がいてこちらをみていた

あ、ほら猫がいたからちょっとね…

僕は咄嗟にごまかす

 

ケイタはもういない

僕の頭の中にかわいい一匹の犬が甦る

ケイタはチワワの男の子だった

小さな鈴がひとつついた赤い首輪をしているひときわ耳のおっきな子

僕が小さな頃は寝る時も遊ぶ時一緒だった

頭を後ろ足で掻くときにチリリリリリリン!って鈴が鳴って大笑いした事もあったっけ

何かの拍子に外れてしまった鈴を探して台所中をウロウロしてた事もあった

冷蔵庫との隙間でほこりまみれになってたけど

 

ケイタがいなくなってしまった時

犬の寿命がなぜ人間より短いのかと幼心にそれしか考えられない事もあったな

あれからずいぶんと時間(とき)は経って僕は大人になった

それでも僕は時に聴こえてくるよく似た鈴の音にハッとする事があるのだ

 

首輪ついてるね。飼い猫かなぁ

彼女が言う

偶々なのかその猫も赤い首輪をしていた

おいでおいでー

彼女が寄っていくと猫は鈴の音を残してさっと逃げてしまった

その音にケイタがもう一度僕の中で甦る

くすっと笑みがこぼれた

あー笑ったあ!

彼女がそれを見てふくれ顔になる

ごめんごめんそうじゃなくてね

そう言いながら僕は彼女の元へ行く

 

実は、小さい頃ケイタっていうチワワを飼っててね…

僕は彼女の手をつなぐとそう言いいながら一緒に歩きだした

もういい訳はいいや

そんな気分で

 

 

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